警備員と債務整理5つのポイント~警備員が自己破産や任意整理をする時の注意点

警備員として働いている人であれば「自己破産するとマズイことになる」ということは知っている方が多いと思います。警備員として勤務する際には、「自己破産していないかどうか」を警備会社から尋ねられたり、誓約書・証明書を提出させられることがほとんどだからです。

 

自己破産した人は警備業務に従事することができません。そのため、解雇・減収・懲戒(降格など)のリスクは高くなります。しかし、必ずクビになるというわけではありません。ウェブなどには、職場に早めに相談したことで、「免責を得るまで配置転換」で対応してもらったという体験談も存在します。

 

また、自己破産以外の債務整理であれば、警備員としての就業制限は発生しません。

 

今回は、警備員が債務整理する際に知っておいてもらいたいポイントについて解説します。早期に対応すれば、自己破産以外の方法で借金を解決できる可能性は十分にあります。また、自己破産しか選択肢がない場合でも、早期に弁護士に相談することで、就業制限の期間を短くすることも可能です。

 

警備員は自己破産すると職を失う可能性がある

警備員は自己破産すると大きなデメリットが生じます。警備員は自己破産すると職を失う可能性がかなり高いといえるからです。

 

警備業については警備業法という法律がルールを設けています。警備業法によれば、「破産者で復権を得ないもの」は、「警備業を営む(警備業者を経営する)こと」だけでなく、「警備員となること」も禁止されているからです(警備業法3条・14条)。

 

警備員として働いたことがある人であれば、警備会社に「破産者ではないことの誓約書」や「破産者でないことの身分証明書」を提出したことのある人もいると思います。これらの書類の提を求められるのは、以上のような警備業法の規定が関係しているのです。

 

そのため、「自己破産」を懲戒事由・解雇事由として定めている警備会社も少なくないと思われます。

 

警備員が自己破産する際には職場への事前の相談・報告が必須

警備員が自己破産するときには、勤務先警備会社への事前の相談・報告が必須です。破産者を警備業に従事させた場合には、警備会社は営業停止などの行政処分を受ける可能性があります。事前の報告を怠ったことで警備会社が営業停止処分をうければ、損害賠償を請求される可能性があります。

 

正社員として警備会社に勤務している人の場合には、早期に相談することで、配置転換などで解雇を免れられる可能性もあります。「バレなければ大丈夫」と甘い考えで対応するのは絶対にやめましょう。

 

自己破産したときに「警備員になれない」のは、いつからいつまでか

自己破産したことで、警備員となることができないのは、「破産手続き開始決定」から「復権」までの期間です。自己破産による就業制限の始期は、「自己破産を申し立てたとき」ではありません。したがって、万が一、勤務先に相談せずに自己破産した場合でも申立後すぐに報告すれば対応は間に合います。

 

一般的なケースでは、自己破産申立てから破産手続開始決定までは、4週間かかります。ただし、東京地方裁判所の「即日面接」の手続きを利用した際には、申し立てた日のうちに破産手続き開始決定が出ることもあるので注意が必要です。

 

就業制限は「復権を得る」ことで解除されます。通常の自己破産の場合には、「免責」を認めてもらうことで復権します。自己破産後の免責は、裁判所による「免責許可決定」によって認められます。しかし、復権の効果が発生するのは「免責の確定」のときなので、免責許可決定後に免責の官報公告がなされた2週間後(免責決定から約1ヶ月後)となります。「不動産の競売を実施する必要がなく換価に時間を要しないケース」であれば、就業制限となる期間は、3~6ヶ月程度と考えておけばよいでしょう(財産処分がないケースでは3~4ヶ月ほど)。

 

自己破産しても「免責を得られないケース」とその場合の復権

破産法は、破産者が一定の事由を抱えているときには免責を認めない場合があると定めています(破産法252条1項)。この「免責不許可事由」の例は次のとおりです。

 

・財産を不当に減少させる行為

・一部の債権者だけを優遇して返済する行為

・クレジットカードの現金化

・浪費やギャンブルなどによる多額の借金

・自己破産申立て前1年以内に返済する資力がないことを偽って借金した場合

・裁判所に提出する書類を偽造した場合

・裁判所・破産管財人に協力しなかったとき

 

ただし、免責不許可事由があるときでも、裁判所の裁量で免責が認められることがあります(裁量免責)。したがって、免責不許可事由があるというだけで自己破産を諦める必要はありません。裁量免責を得るために、誠実に破産手続きに協力することが大切です。

 

免責不許可となった場合の復権の方法は次のとおりです。

・免責不許可後の個人再生手続きで再生計画が認可されたとき

・破産手続き開始から10年が経過したとき

・すべての債務が返済などによって消滅したとき

 

自己破産する状況にある人が借金をすべて返済することは簡単ではありません。最も早いのは個人再生の認可決定ですが、それでも自己破産後半年程度の時間が必要です。

 

免責不許可となれば、即座に復権を得られないだけでなく、借金の返済義務もなくならないので、自己破産する意味が全くなくなってしまいます。特に警備員として早期に職場復帰したいときには、自己破産によって借金を解決するときには、免責不許可とならないように細心の注意を払う必要があります。

 

自己破産以外の債務整理なら就業制限は生じない

警備員としての就業制限は、自己破産の場合にのみ生じます。任意整理や個人再生といった他の債務整理の方法では、一切の資格制限・職業制限は生じません。しかし、任意整理・個人再生はデメリットが小さい分だけ解決できる借金にも限界があります。

 

任意整理は利息しか免除されない

任意整理は、裁判所を利用せずに債権者のそれぞれと個別に「借金を返しやすくするための話し合い」を行うものです。具体的には、「今後発生する利息の免除」と「返済回数のみなおし」によって、返済の負担を軽くしてもらいます。利息がなくなれば、支払総額は減りますし、返済回数が長くなって利息を多く払う心配もなくなります。

 

しかし、あくまでも任意での話し合いのため債権者が任意整理に応じるかどうかは自由です。そのため、「借りて間もない(ほとんど返済していない)借金がある場合」や、「延滞状況がひどすぎる(今後の分割払いに対する信頼がない)場合」には、話し合いにすら応じてもらえないこともあります。

 

また、返済期間にも限界があります。3年を超える分割払いを提案するときには、任意整理の経験が豊富な弁護士・司法書士への依頼が必須ともいえるでしょう。また、返済期間が長くなりすぎて毎月の支払額が少なくなりすぎれば、債権者が承諾してくれないこともあります。そのため、抱えている借金額が多すぎるときには、任意整理での解決は現実的ではないことも少なくありません。

 

個人再生

個人再生は、「借金の一部を3年以内に返済する」ことを条件に、借金の残額の返済を免除してもらう裁判所の手続きです。借金の一部免除があるので、多額の借金がある場合でも自己破産せずに解決できる場合が少なくありません。また、住宅ローンの返済も残っているときには、「住宅ローン特則付き個人再生」を利用することで、住宅ローンの支払い猶予・元金据え置き・返済期間延長・期限の利益の回復(住宅ローンの巻き戻し)といった措置を講じることも可能です。

 

ただし、保有財産が多いときには、個人再生での借金減額の程度が少ない(減額されない)場合があります。個人再生では、自己破産した場合よりも多き金額を3年で返済する必要があるからです(清算価値保障原則)。特に、ローン完済済み・アンダーローンの不動産を持っているときには、借金が全く減額されない場合もあります。

 

任意整理・個人再生を利用したときの毎月の返済額

 

借金の額 任意整理

(5年分割)

個人再生

(最低弁済基準額)

100万円 16,000円 27,000円
300万円 5万円 27,000円
600万円 10万円 33,000円
800万円 133,000円 44,000円
1,000万円 166,000円 55,000円

※1,000円以下の端数は切り捨て

 

上の表は、任意整理(5年)、個人再生(最低弁済基準額)の場合の毎月の返済額の目安です。上記の金額を支払えるだけの収入があれば、自己破産せずに借金を解決することができます。

 

ところで、警備員として働いている人には、「アルバイト」、「派遣・契約社員」という人もいると思います。正社員ではない場合でも、任意整理・個人再生を利用することができます。重要なのは「雇用形態」ではなく、「毎月の返済額を確保できるかどうか」だからです。

 

自己破産したときに1日も早く復権するためのポイント

警備員として働く人が、やむを得ず自己破産するときには、「1日も早く復権する(免責を受ける)」ことが何よりも大切です。早期に免責を得られるのであれば、一時的な配置転換で対応してもらうことで解雇を回避できる可能性も高くなるからです。1日も早く免責を得るために重要なポイントは次のとおりです。

 

・必ず弁護士に依頼して破産手続きを申し立てる

・裁判所・破産管財人の調査に十分に協力する

・免責不許可事由に該当する行為をしない

 

自己破産の「本人申立て」は費用も時間もかかる

自己破産を申し立てる状況にあれば、当然手元のお金に余裕はありません。「弁護士に依頼するなんてお金がないから無理」と思う人も少なくないでしょう。自己破産の申立てそれ自体は、法律知識のない一般の方でもできないものではありません。

 

しかし、自己破産の本人申立てをすれば、時間も費用も逆にかかってしまうことがあります。提出された申立書や資料(財産目録・債権者一覧表など)に不備がある場合や、免責不許可事由があることが疑われる事情があれば、同時廃止となる(財産のない)場合でも、破産管財人が選任され「管財事件」となる可能性があります。

 

管財事件となれば、破産管財人の報酬(予納金)を負担する必要があります。本人申立ての場合の予納金は50万円です。

 

他方で、弁護士に依頼して申立てをすれば、少額管財を利用することができます。少額管財の場合の予納金は20万円(以上)です。また、弁護士に依頼をすれば、十分な準備をして自己破産の申立てをするので、破産手続き開始決定から破産手続きの終了・免責決定までの期間を短縮することも期待できます。

 

免責不許可事由を疑われることをしない

配当できるだけの財産がない場合であっても、免責不許可事由の存在が疑われれば管財事件となってしまいます。たとえば、次の行為は、借金で困っている人がよくやりがちな行為です。十分注意しましょう。

 

・自己破産申立て前の特定債権者への返済

・自己破産直前の詐欺的な借入(返さないことをわかってした借金)

・浪費・ギャンブルなどによる多額の借金

・クレジットカードの現金化

・財産の隠匿

・保有財産の知人などへの不当に安い金額での譲渡

 

また、破産手続き中の裁判所・破産管財人の調査に協力しないときには、免責不許可となることがあります。出席すべき期日(債権者集会・免責審尋)にはきちんと出席し、誠実に対応しましょう。

 

「警備員の債務整理」のまとめ

警備員は自己破産すると職を失う可能性があります。自己破産以外の方法であれば、警備員としての職を失わずに、返済できなくなった借金を解決できます。

 

自己破産以外の方法で借金を解決するには、早期に債務整理を始めることが何よりも大切です。借金が膨らみすぎれば、任意整理・個人再生で対応できない場合が多いからです。また、借金問題が深刻になるほど、免責不許可事由を抱えるリスクも大きくなります。

 

借金問題はできれば誰にも知られたくないものです。「何とか自力で解決したい」ともがいているうちにも借金はどんどん膨らんでいきます。いまでは、多くの弁護士・司法書士事務所で借金の無料相談を受けることができます。借金の返済に行き詰まったときには、できるだけ早く相談するようにしましょう。

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